2021年6月9日、中小企業庁から令和2年度第3次補正予算「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)」の公募要領が公表されました。そこで本記事では、事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)の概要や補助対象経費、対象者や補助額などを簡単にご説明してまいります。
事業承継引継ぎ補助金(専門家活用型)とは
事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業者や事業者等が事業承継、事業再編 及び事業統合を契機として新たな取り組みや広報活動を行う事業について、そ の経費の一部を補助することにより、事業承継、事業再編・事業統合を促進し、我が国経済の活性化を図 ることを目的とする。
引用:令和 2 年度第 3 次補正予算 事業承継・引継ぎ補助金 専門家活用型 【公 募 要 領】(一次公募) Ver.1.0
事業承継引継ぎ補助金を簡単に説明すると、事業承継・引継ぎをきっかけとした業態転換や事業の多⾓化、廃業費⽤、事業を引き継ぐ際に活用した専⾨家に対する費⽤などを⽀援するというものです。
中でも令和3年6月9日に公表された専門家活用型の事業承継引継ぎ補助金は、M&Aによる第三者への事業承継をおこなった、またはおこなう予定の中小企業者に対する最適な補助金と言えます。
事業承継引継ぎ補助金(専門家活用型)の概要
事業承継引継ぎ補助金(専門家活用型)には2種類の支援型があります。1つは【Ⅰ型】買い手支援型。2つ目は【II型】売り手支援型です。1つずつ簡単にご説明いたします。
【Ⅰ型】買い手支援型とは
M&Aによる事業再編や事業統合にともない、買い手として経営資源を譲り受ける予定の中小企業者などを支援するものです。買い手支援型は以下の要件を全て満たす必要があります。
⑴ 事業再編・事業統合に伴い経営資源を譲り受けた後に、シナジーを活かした経営革新等を行うことが見込まれること
⑵ 事業再編・事業統合に伴い経営資源を譲り受けた後に、地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業を行うことが見込まれること
各項目を簡単にご説明していきます。
⑴は、買い手がもともと展開していた事業と譲り受けた事業の相乗効果が見込めること。
⑵は、買い手がM&Aにより事業を譲り受けた後、地域の雇用を維持・向上させることができ、地域の経済に貢献する事業展開ができること。
【Ⅰ型】買い手支援型は、これら2点の項目を満たすことが必須とされています。
次に、【Ⅰ型】買い手支援型の概要を表でご確認ください。
対象となる経費 | 補助率 | 補助下限額 | 補助上限額 |
謝金、旅費、外注費
委託費、システム利用料など |
補助対象経費の
2/3以内 |
50万円 | 400万円以内 |
※ 補助額が補助下限額を下回る場合は補助対象外となります。
※ 廃業費用の補助上限額は200万円です。ただし、廃業費用に関しては、関連する経営資源の引継ぎが補助事業期間内に実現しなかった場合は補助対象外となります。
【II型】売り手支援型
M&Aによる事業再編や事業統合にともない、自社が所有する経営資源を譲り渡す予定の中小企業者などを支援するものです。売り手支援型は以下の要件を満たす必要があります。
地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業等を行っており、事業再編・事業統合により、これらが第三者により継続されることが見込まれること
この要件を簡単にご説明すると、
M&Aによって第三者に譲り渡した事業が、承継者によってしっかりと継続される見込みがあること
となります。事業継続の見込みが立たない場合は支援を受けることができない可能性が高まります。また不動産売買のみの引継ぎは、ここで言う経営資源の引継ぎには該当しません。ご注意ください。
次に、【Ⅱ型】売り手支援型の概要を表でご確認ください。
対象となる経費 | 補助率 | 補助下限額 | 補助上限額 |
謝金、旅費、外注費委託費、システム利用料、廃業費用など(廃業登記費、在庫処分費、解体費、原状回復費など) | 補助対象経費の
2/3以内 |
50万円 |
400万円以内 ※ 廃業費用を活用する場合は600万円以内 |
※ 補助額が補助下限額を下回る場合は補助対象外となります。
※ 廃業費用の補助上限額は200万円
支援を受けることができる補助対象者は?
以下に定義されている中小企業者等に当てはまり、その上で9つの要件を満たし、さらに経営資源引継ぎの要件も満たすことが条件となります。
対象となる中小企業者など
業種分類 | 資本金の額又は出資の総額 | 常勤従業員数 |
---|---|---|
製造業その他(※1) | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
サービス業(※2) | 5千万円以下 | 100人以下 |
( ※1)ゴム製品の製造業(一部を除く)は資本金3億円以下または従業員900人以下
( ※2)ソフトウェア業・情報処理サービス業は資本金3億円以下または従業員300人以下、旅館業は資本金5千万円以下または従業員200人以下
※ その他詳細は公募要領の7ページに記載されております。ご確認ください。
9つの要件
補助金対象者は、以下の9つの要件を全て満たす必要があります。
(1) 補助対象者は、日本国内に拠点もしくは居住地を置き、日本国内で事業を営む者であること。
(2) 補助対象者又はその法人の役員が、暴力団等の反社会的勢力でないこと。反社会的勢力との関係を 有しないこと。また、反社会的勢力から出資等の資金提供を受けている場合も対象外とする。
(3) 補助対象者は、法令順守上の問題を抱えていないこと。
(4) 補助対象者は、事務局から質問及び追加資料等の依頼があった場合は適切に対応すること。
(5) 補助対象者は、事務局が必要と認めるときは、事務局が補助金の交付申請及び事前着手ほか各種 事務局による承認及び結果通知に係る事項につき修正を加えて再度通知することに同意すること。
(6) 補助対象者は、補助金の返還等の事由が発生した際、申請その他本補助金の交付にあたり負担した 各種費用について、いかなる事由においても事務局が負担しないことについて同意すること。
(7) 補助対象者は、経済産業省から補助金指定停止措置又は指名停止措置が講じられていないこと。
(8) 補助対象事業に係る全ての情報について、事務局から国に報告された後、統計的な処理等をされて 匿名性を確保しつつ公表される場合があることについて同意すること。
(9) 事務局が求める補助対象事業に係る調査やアンケート等に協力できること。
簡単にご説明しますと、
法令を遵守する日本国内の中小企業者であり、事業承継・引継ぎ補助金事務局や経済産業省に協力的であること
が条件となります。
※ こちらの詳細は公募要領の6ページに記載されています。ご確認ください。
経営資源引継ぎの要件
補助事業期間 (※ 次の章でご説明します。)に経営資源を譲り渡す者と経営資源を譲り受ける者(承継者)の間で事業再編・事業統合が着手または実施される予定であること、または廃業を伴う事業再編・事業統合が行われる予定であること
ただし、以下のような場合は対象外となる可能性があるのでご注意ください。
例:事業再編・事業統合を伴わない物品・不動産等のみの売買、グループ内の事業再編及び親族内の事業承継など
※ こちらの詳細は公募要領の8ページに記載されています。ご確認ください。
対象となる補助事業期間と補助対象経費
以下に事業承継引継ぎ補助金(専門家活用型)のスケジュールを記載します。
公募期間 | 2021年6月11日(金)〜2021年7月12日(月)18:00まで |
交付決定日 | 2021年8月中旬(予定) |
「事前着手」期間 | 2021年6月9日 〜 交付決定日まで |
事業実施期間 | 交付決定日 〜 最長2021年12月31日(金)まで |
事業完了報告期間 | 交付決定日 〜 2022年1月中旬(予定)まで |
交付手続き | 2022年3月下旬(予定) |
補助事業期間に関する要点をご説明してまいります。
「事前着手」とは
まず基本的に、補助対象となる期間は
2021年8中旬(交付決定日)〜2021年12月31日
までです。この期間内のM&Aによって生じる経費が補助対象となります。公募期間が短いので、申請の際はご注意ください。
ただし、事業承継引継ぎ補助金(専門家活用型)には、「事前着手」というものが設けられています。こちらを簡単に説明しますと、
2021年6月9日(公募要領の公表日) 〜 2021年8月中旬(交付決定日)
までの期間中に補助対象経費に係る契約・発注をおこなっている場合またはおこなう予定がある場合は、事業承継引継ぎ補助金(専門家活用型)の補助対象になるということです。申請時に事前着手の届出を申請し、事務局の承認を受けることで、事務局が認めた日を補助対象事業の補助事業開始日とすることができます。
ただし事前着手が承認された場合であっても、2021 年 6 月 9 日(公募要領の公表日)より前に行われた契約・発注については、 補助対象経費として認められないため、こちらもご注意ください。
※ 詳細は公募要領の13ページに記載されています。ご確認ください。
補助対象となる経費
次にM&Aにおける費用に焦点を当て、補助対象となる経費のご説明をします。
まず大前提として、以下の3つに要件を満たす必要があります。
⑴ 使用目的が補助対象事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
⑵ 補助事業期間内に契約・発注を行い支払った経費(注1)(注2)
⑶ 補助事業期間終了後の実績報告で提出する証拠書類等によって金額・支払い等が確認できる経費
(注 1)補助対象経費の契約や発注が2021年8月中旬(交付決定日)〜 2021 年 12 月 31 日までの間であり、支払いまでが同期間内に完了している経費であること。事前着手の届出を申請し、事務局の承認を受けた場合は、補助対象経費の契約締結日が、事務局の認めた補助対象事業の事業開始日以降かつ、 2021年 12 月 31 日までの間であり、支払いまでが同期間内に完了している経費であること。
(注 2)委託費のうち、ファイナンシャルアドバイザリー(以下、「FA」という)・M&A 仲介費用の基本合意に基 づく「中間報酬」については、補助事業期間内に以下の⑴または⑵をおこない、補助事業期間内に支払った経費を補助対象経費とする。また、FA・M&A 仲介費用の最終契約に基づく「成功報酬」については、 補助事業期間内に以下の⑴または⑶をおこない、補助事業期間中に支払った経費を補助対象経費とする。
⑴ 選任専門家と契約書を締結
⑵ 交渉相手と基本合意書を締結(意向表明書は不可)
⑶ 交渉相手と最終契約書を締結
次に、FA・M&A 仲介費用における中間報酬または成功報酬の補助対象経費の該当可否(契約等の時期 別)を表でご確認ください。
実施期間 | 補助対象経費 該当可否 | |||
補助事業期間 開始前 | 補助事業期間 | 補助事業期間 終了後 | ||
① | 専門家契約、契約、報酬支払 | ○ | ||
② | 専門家契約 | 契約、報酬支払 | ○ | |
③ | 専門家契約、契約 | 報酬支払 | × | |
④ | 専門家契約、契約 | 報酬支払 | × |
※ 「専門家契約」「契約」「報酬支払」の定義は公募要領で以下のように記載されています。
・専門家契約 ・・・FA・M&A 仲介専門家と FA・M&A 仲介費用に係る委託契約書を締結
・契約 ・・・交渉相手と基本合意書又は最終契約書を締結
・報酬支払 ・・・基本合意に基づく中間報酬又は最終契約及び最終契約に基づく取引の実行(以下、「ク ロージング」という。)に伴う成功報酬の支払い
表の内容を簡単にご説明しますと、
・2021年8中旬(交付決定日)〜2021年12月31日の補助事業期間内では、「専門家契約」「契約」「報酬支払」の全てが補助対象経費として認められます。
・2021年6月9日 〜 2021年8月中旬(交付決定日)の事前着手期間内では、「専門家契約」のみが補助対象経費として認められます。つまり、「契約」が事前着手期間内で発生している場合は全てが補助対象経費として認められません。
・「報酬支払」が2021年12月31日以降となった場合は、「報酬支払」以前に支払ったすべての経費を含めて補助対象経費として認められません。
ということです。
※ こちらの詳細は公募要領の14ページに記載されており、さらに36ページ以降でより詳細に説明されています。ご確認ください。
補助対象事業
事業承継引継ぎ補助金(専門家活用型)の対象となる事業は、以下の要件に合致しないことが求められています。
(1) 補助対象事業は、以下のいずれにも合致しないこと。
1.公序良俗に反する事業
2.公的な資金の使途として社会通念上、不適切であると判断される事業(風俗営業等の規制及び 業務の適正化等に関する法律(昭和 23 年法律第 121号)第 2条において規定される各営業を 含む)
3. 国(独立行政法人を含む)及び地方自治体の他の補助金、助成金を活用する事業
※ 同一の補助対象経費(注1)に対して国(独立行政法人を含む)及び地方自治体の他の補助金、 助成金の交付を受けている、受けることが決まっている、又は受ける見込みである場合は対象外となる。
(注1)自己負担分に対しては、地方自治体の補助金を利用することができる。ただし、地方自治体毎 に制度の内容が異なる場合があるため、必要に応じ地方自治体にも確認すること。
※ 次に掲げる事業は補助対象とならない。また、交付決定以降に以下に該当すると確認された場合、 交付決定が取消しとなる場合があるため注意すること。
・ テーマや事業内容から判断し、同一又は類似内容の事業であり、国(独立行政法人等を含む) 及び地方自治体が助成する他の制度(補助金、委託事業等)と重複する事業に採択または交 付決定された場合
※ こちらの詳細は公募要領の12ページに記載されています。ご確認ください。
事業承継引継ぎ補助金の申請方法
事業承継引継ぎ補助金(専門家活用型)の交付申請をおこなうためには、経済産業省が運営する補助金 電子申請システム
の利用が必須となります。
そのため、jGrantsを利用するためには
アカウントを取得しなければなりません。
【ご注意ください】
「gBizIDプライム」アカウントは、発行されるまで2~3週間程かかります。事業承継引継ぎ補助金の公募期間は短いため(2021年6月11日(金)〜 2021年7月12日(月)18:00まで)、早めのアカウント取得をお願いいたします。公募開始前から「gBizIDプライム」のアカウント発行は可能です。
補助金や申請に関するお問い合わせ先
事業承継引継ぎ補助金(専門家活用型)に関するご不明な点は、事業承継・引継ぎ補助金事務局にお問い合わせください。
専門家活用型お問い合わせ:03 - 6625 - 8045
※ 本記事は事業承継引継ぎ補助金サイトおよび公募要領を元に作成されております。間違いなどがあるかもしれませんので、必ず事務局にお問い合わせの上ご確認ください。弊社は本記事に対する如何なる責任も負いませんのであらかじめご了承ください。
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