
「環境に配慮した製品です」
「廃棄物の90%をリサイクルしています」
「サステナブルな企業を目指しています」
こうした環境に関するメッセージを、企業が発信する機会は増えています。
一方で、その主張を裏付けるデータや根拠が十分でなければ、消費者や取引先から「本当に環境に良いのか」「その数字はどのように算定したのか」と問われる可能性があります。
こうした、実態以上に環境に良い印象を与えるような環境訴求は、一般に「グリーンウォッシュ」と呼ばれています。
そして今、企業に求められ始めているのは、単に「環境に良い取り組みをする」ことだけではなく、その取り組みをデータによって説明し、必要に応じて第三者が検証できる状態にすることです。
1.グリーンウォッシュとは?
グリーンウォッシュとは、実際の環境面での取り組みや効果以上に、環境に配慮しているような印象を与える表示や訴求を指す言葉です。
例えば、
- 「環境にやさしい」
- 「地球にやさしい」
- 「サステナブルな製品」
- 「廃棄物ゼロ」
- 「リサイクル率90%」
- 「CO₂排出量を大幅に削減」
といった表現が考えられます。
もちろん、こうした言葉を使うこと自体が問題なのではありません。
重要なのは、その環境主張を合理的な根拠によって説明できるかということです。
環境省の「環境表示ガイドライン」でも、あいまいな環境表現を避けること、環境主張に説明を付けること、検証に必要なデータや評価方法を提供できる状態にすること、比較主張には適切な数値等を用いることなどが示されています。
つまり、これからの環境情報では、
「環境に良いと言っているか」
だけではなく、
「なぜ環境に良いと言えるのかを説明できるか」
が重要になります。
2.なぜ今、グリーンウォッシュが注目されているのか
背景の一つが、企業による環境情報の発信が急速に増えていることです。
脱炭素、再生材、リサイクル、資源循環、廃棄物削減、サステナビリティなど、企業が環境面で取り組むテーマは広がっています。
一方で、企業ごとに、
- 何を「リサイクル」とするのか
- 何を「廃棄物削減」とするのか
- どの拠点を対象にするのか
- どの期間のデータなのか
- どのような計算方法を使うのか
が異なれば、同じ「リサイクル率90%」という数字でも、その意味は変わってしまいます。
そのため、環境情報については、数字そのものだけでなく、その数字がどのようにつくられたのかが重要になっています。
3.欧州では「環境主張の根拠」がより重要になりつつある
この流れは、日本だけのものではありません。
EUでも、環境に関する主張を信頼できるものにし、グリーンウォッシュを防ぐための取り組みが進められています。
欧州委員会は、Green Claims Directive(環境主張に関する指令案)において、企業が環境主張を行う際に、科学的根拠に基づく方法や検証可能な方法によって、その主張を裏付けることを提案しています。
さらに、この指令案には、環境主張の根拠や表示について、独立した認定検証者による確認を求める仕組みも盛り込まれています。
ただし、Green Claims Directiveは、2026年10月現在、まだ成立・施行された法律ではありません。欧州議会では2024年3月に第一読会の立場が採択され、その後、現在は欧州理事会(EU理事会)の第一読会での立場を待っている段階です。欧州委員会も現在、同法案のステータスを「Pending(審議中)」としています。
一方で、EUではこれとは別に、消費者のグリーン・トランジションを支援するための指令(Directive (EU) 2024/825)が2024年に成立しています。この指令では、消費者を誤認させるおそれのある曖昧な環境主張などについて規制が強化され、加盟国は2026年3月27日までに国内法へ転換し、2026年9月27日から適用することとされています。
つまりEUでは、すでに環境に関する表示・広告について一定の規制強化が進む一方、さらに環境主張の根拠や検証方法を具体化するGreen Claims Directiveについても議論が続いている、という状況です。
これは、日本企業にとっても無関係な動きではありません。
特に、EU市場で製品を販売する企業や、グローバル企業のサプライチェーンに入る企業にとっては、今後、環境情報について「何を主張するか」だけでなく、「その主張をどのようなデータや根拠によって説明できるか」が、より重要になる可能性があります。
4.日本でも「環境表示の根拠」が重要になっている
日本でも環境省は2026年に「環境表示ガイドライン」を改定しています。
同ガイドラインでは、グリーンウォッシュと指摘されにくい環境表示の基本的な考え方として、例えば次のような事項が示されています。
- あいまいな環境表現を避ける
- 環境主張の内容に説明を付ける
- 検証に必要なデータや評価方法を提供できるようにする
- 比較主張は数値等に基づき適切に行う
- 評価・検証に必要な情報へアクセスできるようにする
つまり、環境情報を発信する企業には、主張だけでなく、その裏付けとなる情報を持っておくことが求められる方向にあります。
なお、日本には現時点で「グリーンウォッシュ規制」という単独の法律が存在するわけではありません。
環境表示については、景品表示法など既存の制度との関係もあり、環境省のガイドラインなどを含めて考える必要があります。
そのため、「グリーンウォッシュ規制が始まった」と単純に捉えるのではなく、環境に関する主張について、根拠を説明できることの重要性が高まっていると考える方が実務上は分かりやすいでしょう。
5.「リサイクル率90%」なら、それだけで十分なのか?
例えば、ある企業が、
「当社のリサイクル率は90%です」
と発表したとします。
この数字だけでは、実は十分な情報とは言えません。
少なくとも、次のようなことを確認する必要があります。
① 何を分母にしているのか
廃棄物全体なのか、特定の廃棄物だけなのか。
② 何を「リサイクル」としているのか
マテリアルリサイクルだけなのか、リユースやその他の資源化を含むのか。
③ 対象となる拠点はどこなのか
1工場だけなのか、国内全工場なのか、海外拠点まで含むのか。
④ 対象期間はいつなのか
1か月なのか、1年間なのか。
⑤ どのデータを使って算定したのか
廃棄物処理業者からの実績データなのか、社内集計なのか。
⑥ 第三者が確認できるのか
その数字を裏付ける資料や記録が残っているのか。
このように考えると、「90%」という数字そのものよりも、
「90%という数字を、どのような根拠で説明できるか」
が重要であることが分かります。
6.環境情報は「言う」から「証明できる」へ
今後の環境経営を考える上で、企業には一つの変化が求められる可能性があります。
これまで:
「環境に配慮しています」
これから:
「このデータに基づいて、環境に配慮した取り組みを行っていることを説明できます」
さらにその先には、
「第三者による検証を受けています」
という状態があります。
これは、単なる広告表示の問題ではありません。
環境経営そのものを、
取り組む → データを集める → 評価する → 改善する → 説明する
という経営管理の仕組みに変えていくことでもあります。
参考:環境情報の信頼性を高めるためには、まず実際の廃棄物・資源循環の状況を正しく把握し、改善することが重要です。
アシブネの資源循環コンサルティングについてはこちらをご覧ください。
7.廃棄物・資源循環の分野では、特にデータが重要
例えば、企業がゼロウェイストや資源循環を目指す場合、次のような情報が必要になります。
※あくまでも一例です。
- 廃棄物の種類
- 発生量
- 発生拠点
- 処理方法
- 処理委託先
- リユース量
- リサイクル量
- 焼却量
- 埋立量
- 契約・許可情報
- マニフェスト等の管理情報(トレーサビリティ管理)
これらが拠点ごとにバラバラに管理されていると、会社全体として「どの程度資源循環が進んでいるのか」を正確に把握することが難しくなります。
逆に言えば、廃棄物に関する情報を継続的に収集・管理し、一定のルールで集計できるようにしておけば、環境情報の説明力は大きく変わります。
8.第三者認証・第三者検証という考え方
環境情報の信頼性を高める方法の一つが、第三者による検証・認証です。
自社で、
「当社はこれだけ資源化しています」
と説明するだけではなく、
「一定の基準に基づいて評価し、その結果について第三者による確認を受けています」
と説明できれば、環境主張の信頼性を高める一つの方法になります。
もちろん、すべての環境主張に第三者認証が必要になるわけではありません。
しかし、環境情報の重要性が高まり、企業間取引や海外取引、サプライチェーン、投資家・顧客への説明などにおいて環境データの信頼性が問われる場面が増えれば、第三者による検証の価値も高まっていくと考えられます。
9.UL2799という選択肢
廃棄物・資源循環の領域では、第三者による環境主張の検証という考え方がすでに存在しています。
その一つが、UL SolutionsのUL2799「Environmental Claim Validation for Zero Waste to Landfill」です。
参考記事:UL2799とは?UL2799についてわかりやすく解説
UL SolutionsはUL2799に基づき、企業の廃棄物に関する取り組みや転換率に関する環境主張を評価・検証しています。
UL Solutionsによれば、廃棄物の削減・リユース・リサイクル・コンポスト等の廃棄物転換を評価し、廃棄物データや記録、処理方法などを確認することで、廃棄物転換の実績を第三者の立場から検証する仕組みが提供されています。
そのため、UL2799は単に「ゼロウェイストを目指すための基準」というだけではなく、
企業が行っている廃棄物削減・資源化の取り組みを、一定の基準とデータに基づいて第三者が検証し、環境主張の信頼性を高めるための仕組み
として捉えることができます。
10.UL2799を取得することが目的ではない
ここは非常に重要です。
UL2799の取得そのものを目的にしてしまうと、企業にとっては「認証のためにデータを集める」という活動になってしまいます。
本来は、
廃棄物を把握する
↓
発生量・処理方法・コストを分析する
↓
削減・リユース・リサイクルを進める
↓
資源循環を高める
↓
取り組みをデータで説明できるようにする
↓
必要に応じて第三者検証・認証につなげる
という順番で考えることが重要です。
認証はゴールではなく、環境経営の取り組みを外部に説明するための一つの手段です。
11.企業が今から確認しておきたい5つのポイント
今後、環境に関する情報発信を強化する企業は、まず次の5点を確認してみるとよいでしょう。
CHECK 1 環境に関する主張を整理する
自社はどのような環境情報を外部に発信しているでしょうか。
「リサイクル率」「廃棄物削減率」「再生材使用率」「CO₂削減率」など、具体的に整理します。
CHECK 2 その数字の定義を確認する
分母・分子・対象期間・対象拠点・算定方法を明確にします。
CHECK 3 根拠となるデータを確認する
その数字を裏付ける資料が社内に残っているか確認します。
CHECK 4 第三者が確認できる状態か確認する
社内の担当者しか分からない状態ではなく、別の担当者や第三者が追跡できる状態になっているかを確認します。
CHECK 5 改善につながる仕組みになっているか確認する
数字を報告するだけでなく、
「どこの廃棄物が多いのか」
「どの処理方法に改善余地があるのか」
「どの廃棄物をリユースできるのか」
まで分析できる状態を目指します。
12.これからの環境経営に必要なのは「証明できる環境経営」
環境経営は、これまで「何を取り組むか」が重視されてきました。
しかし、これからは、
何を取り組んだのか
だけではなく、
どのような結果になったのか
その数字はどのように算定したのか
その根拠を説明できるのか
まで問われる場面が増えていく可能性があります。
特に、グローバルに事業を展開するメーカーや、海外企業との取引がある企業では、環境情報の信頼性は今後さらに重要なテーマになることが考えられます。
「環境に良い会社」から、
「環境への取り組みを、データによって説明できる会社」へ。
そして必要に応じて、
「第三者によって、その取り組みが検証されたことを説明できる会社」へ。
環境経営の進化は、取り組みそのものだけでなく、その取り組みを支えるデータと管理の仕組みから始まります。
アシブネが支援できること
株式会社アシブネでは、企業の廃棄物管理・資源循環について、現状把握から改善、データ管理、環境経営への活用までを支援しています。
例えば、
- 拠点ごとの廃棄物の種類・量の把握
- 廃棄物処理コストの分析
- 処理方法・リサイクル状況の整理
- リユース・資源循環の可能性の検討
- 廃棄物管理体制の整備
- 拠点ごとのデータの一元管理
- 環境情報を説明するためのデータ基盤づくり
- 第三者認証・検証を見据えた準備
などです。
環境経営において重要なのは、認証を取得することだけではありません。
まずは、自社の廃棄物・資源循環の現状を正しく把握すること。
その上で、改善し、データとして蓄積し、必要な場面では第三者による検証につなげる。
アシブネは、企業が「環境に配慮しています」と言うだけではなく、「なぜそう言えるのか」を説明できる状態をつくることを支援します。
環境に良いことをする。
そして、その価値を説明できるようにする。
それが、これからの環境経営に求められる一つの形ではないでしょうか。
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